ヨーロッパのデジタル鉄道模型

複数の列車を走らせることができるのがデジタルの魅力

ヨーロッパの鉄道模型の魅力を一言で表すと、

たくさんの列車を同時に走らせることができる

ということになります。

「アナログ式」の鉄道模型と「デジタル式」の鉄道模型の違いは、そこです。

サウンドもデジタルの魅力の1つだと思うけど?

確かにそうですね。

しかし、アナログ鉄道模型でも、サウンドを鳴らすことは普通にできます。
日本のNゲージでも、16番(1/80 HOゲージ)でも、サウンドを鳴らすシステムはいつくかあります。

「1つの編成をサウンドを楽しみながら運転したい!」のであれば、別にデジタルを選択する必然性はありません。
むしろ、1つの編成しか運転しない、1つ1つの列車を切り替えて運転する、のであれば、アナログで十分で差はないのです。

たくさんの列車を同時に走らせる必要ってあるの?

あります!

これは実際にデジタル鉄道模型で、複数の列車を自在に走らせて遊ぶことを体験した人でないと、感覚がつかみにくいです。

たくさんの列車を「走らせる」と書きましたが、別に「常に走っている」必要はありません。
線路の数が少なくても、同時に複数の列車が、線路上に存在していて、それぞれサウンドや照明や運転を含めて、いつでも自由に遊べるということが重要です。

言い換えると「たくさんの列車をレイアウトに設置しておける」ことが、デジタル鉄道模型の魅力です。

レイアウトにたくさんの列車があると何が楽しいの?
  • 小さな部屋の狭い部屋でも、たくさんの列車で遊べる。
  • たとえ、走行する列車が1台だけだったとしても、止まっている列車もサウンドや照明で演出できる。
  • 駅のアナウンスや雑踏の音、ジオラマや時間の演出なども、列車に合わせてできる。

など、様々なメリットがあります。

直線が1本、円が1つだけしかないレイアウトでも、列車を互いに別方向に運転したり、連結や入れ替えをしたり、続行運転ができるなど、列車の運転士の視点だけでなく、「鉄道のある世界観そのもの」をミニチュアとして想像することができるのです。

ヨーロッパの鉄道模型はアナログ時代からたくさんの列車が走るシステムだった

ヨーロッパの鉄道模型は、現在ではデジタルが主流です。
もちろんアナログ鉄道模型も、いまでも多くの人が遊んでいます。

ヨーロッパでは、アナログ鉄道模型時代から、たくさんの列車を同時に走らせる仕組みになっていました。
そして、その仕組みを向上させていく過程で、デジタル技術が進化したため、デジタル鉄道模型が誕生したという流れです。

Nゲージのような日本のアナログ鉄道模型とは、昔から仕組みと目指すゴールが異なっていたのです。

このことは私が言っても、信じてもらえないと思いますので、実際に動画で見てもらった方が良いです。

何十年も前のアナログNゲージ

Youtubeにアップされている下の動画は、昔のドイツのアナログNゲージのプロモーションビデオです。

アナログですが、たくさんの列車が、同一線路上を、別方向に走り、連結や解放も可能で、信号機や自動運転もできて、ターンテーブルとトラバーサーが組み合わさった施設の上では、別方向から来た列車が同時に走るシーンなどが紹介されています。

この動画は1970年代、80年代のものらしいです。
つまり、今から何十年も前で、私が生まれたころの鉄道模型です。

その時に、もうこういう遊びができていたのです。

何十年も前のアナログHO

こちらは、私自身が、アナログ時代の3線式HOで遊んだ時の様子です。
このように、アナログでも、信号機で停車して、自動運転をすることができるのです。

ですので、たくさんの列車を走らせるという意味では、ヨーロッパにおいては、アナログ式とデジタル式に、それほど差があるとは言えないのです。
しかし、それでも、デジタルの方がより簡単に、よりたくさんの列車を走らせることができることは事実です。

ヨーロッパではアナログ式の鉄道模型でも、同一線路上に複数の列車を走らせることができ、自動運転などもできていた。
その進化系が、現代のデジタル鉄道模型である

鉄道模型の種類

アナログ式とデジタル式

鉄道模型は電気とモーターで走行しています。
ディーゼル機関車でも、蒸気機関車でも、仕組み上は、鉄道模型では全部電気機関車なのです。

中にはライブスチームのように、本当に上記の力で走らせる模型もありますが、個人用に販売されている鉄道模型のほとんどは電気とモーターで走っています。

アナログ式

コントローラーで線路にかける電圧を変化させて、線路から、列車のモーターへ直接電気を採り込む方式です。

線路には、直流、または、交流の電気を、列車が走るときに必要な量だけ流します。

デジタル式

列車にコンピューターチップを搭載し、コンピューター制御でモーターをコントロールする方式です。

線路には常に交流の電気が、最大電圧で流れています。

どちらが優れているとかではありません。2つの種類があるのです。
このサイトでは、ヨーロッパのデジタル鉄道模型が対象ですので、アナログ鉄道模型では、書いてあることは全く通用しませんので、ご注意ください。

2線式と3線式

2線式鉄道模型

左右2本のレールで構成される線路で走るのが、2線式鉄道模型です。

日本のNゲージも、16番(1/80 HOゲージ)も2線式です。

  • 線路の見た目が、現実の線路の見た目に近い。
  • 緩やかで実感的な分岐器を設置、走行できる。
  • 電気式センサーや細かな配線を行った場合には、かなり高い集電性能を発揮できる。
  • 室内照明の導線が比較的簡単にできる。

といった特徴があります。

3線式鉄道模型

左右2本のレールと、対になった中央の3本目のレールも使用して走行する仕組みの鉄道模型です。

メルクリンHOが大きなシェアを持っていますが、他にはあまり採用されていない方式です。
しかし、歴史的にもファンが多いため、特にドイツではメジャーな鉄道模型となっています。

  • 電気的に左右対称になるため、線路配線の自由度が高く、レイアウトスペースを最大限に有効活用できる。
  • リバース配線も特別な仕組みを必要とせずに設置走行できる。
  • アナログ式では2線式と比較して集電性能が高いと言える。
    現代のデジタル式では、2線式と比較して、それほど大きな差はない。

スケール(模型の大きさ)

スケール(縮尺)とは、実物を何分の一に小さくしたかという模型の大きさの物差しのことです。

Zは1/220、Nが1/150、HOが1/87、といった具合に、世界標準のスケールが決まっています。

あれ? 日本のNゲージは、1/150と1/160があるんだけど?

そうです。日本の鉄道模型は、世界標準の縮尺では作られていません。
だから「N」ではなくて「Nゲージ」、「HO」ではなくて「16番」「HOゲージ」と表記されているのです。

日本の鉄道模型はゲージモデル

日本の鉄道模型には、独自の課題があります。

現実の鉄道そのものが、様々なサイズと線路幅が混在している

ということです。

ヨーロッパでは多くの鉄道は世界標準軌の上を走っています。
そのため、車両をHO(1/87)で作成しても、いろんな列車が発売できるため、さほど問題はありません。

また、模型のルールとして、ナローゲージ(狭軌)の鉄道は、線路幅(ゲージ)の方を変えて走るということもあります。

標準軌を走っている列車と、狭軌を走っている列車は、ヨーロッパのメーカーでは、大きさは同じ縮尺で縮めていているが、走れる線路幅が違うので別の線路しか走れない。

という現実と同じようになっています。

日本で、ヨーロッパのように模型を作ってしまうと、何種類かの線路とシステムを発売しないと、いろんな列車が走れなくなってしまうのです。

例えば、新幹線とJR在来線は、線路幅が異なります。
また、私鉄でも、「京阪、阪急、阪神」と、「名鉄、小田急、東急」では、線路幅が異なります。
さらには「近鉄」では、近鉄内でも線路幅が路線によって異なっています。

ヨーロッパと同じスケールモデルを採用すると、新幹線と在来線、名鉄と京阪は、同じレイアウトでは遊べなくなってしまい、別々の線路を買わなくてはいけなくなってしまいます。

日本では、プラレールでも、Nゲージでも、HOゲージでも、線路幅の方を統一して、列車の縮尺の方を調整していた鉄道模型が主流になっている。
「ゲージモデル」と呼ばれたりしている。

つまり、ヨーロッパの鉄道模型と、日本の鉄道模型は、別のおもちゃです。

N=Nゲージではありませんし、HO=HOゲージではありません。

線路幅が合っていれば、列車自体は走行することはできますが、実際には大きさ(スケール)が異なるため、様々な問題も生じます。
日本の車両の方が、実物と比較して大きく作られているため、もし同じレイアウトを走行させた場合には、HO(1/87)の線路を走る、HOゲージ(16番 1/80)は、当然急カーブも曲がれなければ、架線柱やホームに衝突するリスクもあるということです。
これはNでも同じです。

並べて見ると一目瞭然

実際に並べて見ると、こうなります。

内側から、メルクリンのMiniTRIX(ヨーロッパのN)、KATO(日本のNゲージ)、メルクリンHO(ヨーロッパのHO)です。

いずれもメーカー既定の最小回転半径を通過しています。

日本のNゲージの新幹線は、ヨーロッパのHOとほぼ同じカーブとスペースが必要なこと、ヨーロッパのNはかなりの急カーブを通過できるので、要求されるスペースが狭くてよいことがわかると思います。

メルクリン社は様々なラインナップを揃えている

よく誤解されていますが、メルクリン=3線式HOではありません。

3線式HOも、ラインナップの1つです。他にも製品がたくさんあります。

Z

世界最小の鉄道模型と言われる1/220の小さな鉄道模型。
過去にデジタル化が発表されたことがあるが、実際には発売にはいたらず、アナログ式しか発売されていない。

MiniTRIX

1/150のNゲージ。アナログとデジタルに対応している。
昔は別会社の製品だったが、いまではメルクリン社から販売されている。
機能的にはデジタルはHOと比較してもほぼ遜色はなく、サウンドも出るし、自動運転も可能で、コントローラーや機器も共通で使用できるものが多い。
中にはパンタグラフが昇降したり、煙の出るSLもある。

TRIX

1/87のHO。ややこしいが、2線式と3線式があり、2線式はTRIX、3線式はTRIX expressというブランド名。
ドイツの鉄道駅で見かけることがあるかも。
昔は別会社の製品だったが、いまではメルクリン社から販売されている。
アナログとデジタルに対応していて、デジタルはDCC。

HO

1/87のHO。3線式のみがラインナップされている。
ほとんどの人が思い浮かべる「メルクリン」は、このブランドのこと。
単一メーカーの単一ブランドとしては、世界的に大きなシェアを持っている。

1

1番ゲージと呼ばれる線路幅45mm、1/32の大きな2線式の鉄道模型。
非常に迫力がある。ただし、一般人が過程で遊ぶには大きすぎて扱いにくい面もある。

LGB

屋外で走ることができる庭園鉄道のブランド。大きさも大きくて迫力がある。
昔は別会社の製品だったが、いまではメルクリン社から販売されている。

メルクリンは世界最大級の鉄道模型ブランド